「アマビエ」


あるとき、塾生からこんな話を聞きました。
学校の先生が「古典なんて必要ないのに、入試があるからみんな勉強しなくてはいけない」とおっしゃったというのです。
直接聞いたわけではないので、その先生の真意とは違う伝わり方をしているかもしれません。
 確かに、大人になって授業で古典を習っておいて本当に助かったと思う人はあまりいないでしょう。

 しかし、義務教育で古典に触れなければ、古典に興味を持つ機会はほとんどないかもしれません。
そうなると、古文書を解読できる人もそのうちいなくなり、昔の人たちが書き残したことは後世に伝えられなくなってしまいます。
今SNSで話題の「アマビエ」ももとは江戸時代の瓦版に書かれたものです。
古文書を研究する人がいなければ、伝承されなかったかもしれません。
現実にコロナウイルスが消滅するわけではないので、伝承されなくてもいいという意見もあるでしょう。
が、この閉塞感漂う中で一部の人にとってはアマビエが少し心を軽くする役割を担っているのです。
ですから、このような軽い例だけ見ても、古典が不要というのは違うと思うのです。

 古典に限らず学校で習うことは、全員にとって将来役立つものではないかもしれないけれど、誰かにとっては必要なもので、回りまわってみんなの役に立つ、そういうものの基礎だと思うのです。
そんなことを思いつつ、また皆さんと顔を合わせて授業できる日が再び戻ってくることを切に願います。